2008年6月12日
バスケットボールにおける黒人選手の活躍
さて、バスケットボールはあらゆるスポーツの中でも、最も黒人に向いている競技だと思います。NBAのゲームを見れば俊敏で身体能力に優れ、身長もある黒人パワーの凄さは一目瞭然です。
平均的にはコート上の8人が黒人で、時には全員が黒人だったりします(黒色人種のことをブラックやアフロ、耳慣れないところではエボニー、カラードという言い方もありますが、ここではあえて日本で一般的になじみのある「黒人」という言葉を使います)。
バスケットには、野球やアメリカンフットボールのような広い競技場はいりません。プールほどの大きさの広場があれば十分です。その上用具でお金が掛かることもありません。狭い広場とリング、ボールさえあればゲームができる。ということは、貧しい人が多かった黒人にとって、特に都会でやるスポーツとして最適ということがいえます。
黒人たちにバスケットを広めたのがエドウィン・ヘンダーソンという人です。黒人がバスケットボールで活躍することが人種的偏見をなくすことにつながると考えた彼は、まずワシントンD.C.の黒人たちの間にこれを広めました。
次にニューヨークでも紹介したところあっという間に人気が出て、そこからBLACK GAMEとして広まったといわれています。ニューヨークのハーレムから生まれたのが黒人だけの史上最強チームといわれるニューヨーク・ルネッサンズで、その伝統はのちにハーレム・グローブトロッターズにも繋がっていきました。
ルネッサンズ、通称レンズは白人最強と言われたオリジナル・セルティックス(現在のボストン・セルティックスとは関係ありません)と対決して勝利を収めています。「動きが全然違った」というのは、対戦した白人選手の話。
まだNBAが出来る前の1925年のことです。
1946年、NBAが創設されました。当時はBAA(Basketball Association of America)と言う組織で、その後合併でNBAが生まれたわけですが(詳しくは「NBA草創期 NBA誕生(2)」参照)その最初のゲームに黒人はいませんでした。黒人選手の登場は1950年、ドラフトでボストン・セルティックスが2巡目でデュケスン大のフォワード、195cmのチャック・クーパーを指名したのが最初です。このときセルティックスのオーナー、ブラウン氏は他のオーナーから「クーパーは黒人だぞ!気は確かか?」と言われたのだとか。
この指名が他のチームの考えを改めたのか、7巡後にワシントン・キャピタルス(その後消滅)がアール・ロイドを指名し、ニックスはトロッターズのナット・クリフトンと契約して一気に3人の黒人がNBAのコートに立つことになりました。
なおスケジュールの関係で、アール・ロイドが「最初にNBAでプレーした黒人選手」ということになっていますが、セルティックスが指名しなかったらキャピタルズのロイド指名もなかったわけで、このことは一概にロイドやキャピタルズの功績ということはできないと思います。
ちなみに当時のセルティックスのHC、レッド・アワバックは「純粋に彼の運動能力の高さが欲しかった」と語っています(のちにアワバックは引退する自分の後継者として、長年育ててきたやはり黒人選手のラッセルを指名しました)。
面白いのはカラー・バリヤーを最初に破ったのがボストン・セルティックスだったこと。
知っている方ならわかると思いますが、ボストンはいわば保守的な都市です。いまだに人種差別も多く、あのビル・ラッセルでさえ最近まで無視されたことがあると言っていたほどです。
NBAの花形選手と言えばジョージ・マイカン、ボブ・ペティット、ボブ・クージー等の白人でしたが、それからは黒人選手が堰を切ったがごとくNBAに流れ込みます。50年代半ばからのラッセルvs.チェンバレンのライバル関係に始まったこのトレンドに、カリーム・アブドゥル・ジャバーやドクター・Jが続きますが、まだリック・バリー、ジェリー・ウエスト達白人選手も多くいました。
しかし80年代のスターを挙げると唯一ラリー・バードを除いてマジック、アイザイア・トーマス、ドミニク・ウィルキンス等々黒人ばかりです。
NBAでは黒人選手がトレードや契約解除も白人より先に行われるとか、年俸は同じレベルだったら黒人よりも白人の方が高い、などまだ差別があるようです。しかしバスケットが好きな若者の中には、NBA好きが高ずるあまり黒人をリスペクトし、HIPHOPやB-BOYなど彼らのライフスタイルを真似る人が、本当にたくさんいます。
黒人たちにバスケットを広めたヘンダーソンの「(黒人の)スポーツでの卓越はさまざまな困難を生き延び、奴隷制の苦難に耐え得た強者(進化論的意味での)の末裔だからであり、それゆえ強靱な筋肉繊維を遺伝的に受け継いでいる」という主張が正しいのかどうかわかりませんが、多くの黒人選手がコートでその能力をいかんなく発揮していることは確かです。
