2008年2月28日
"BAD BOYS"ピストンズとジョーダンの"The Shot"
4年連続ファイナル出場を果たしたボストン・セルティックスですが、ベテランが多い分、怪我といふリスクが付いて回ります。ベスト・シックスマン(最優秀控え選手とでも訳すのか?)のビル・ウォルトンがやはり膝の状態が思わしくなく引退しました。
87-88
優秀な控え選手を失ったセルティックスですが、レギュラー・シーズンは57勝を上げ、54勝のデトロイト・ピストンズを上回りイースタンでは首位をキープしました。
しかしインディアナ大で全米チャンピオンを獲ったポイントガードのアイザイア・トーマスを中心に、点取り屋エイドリアン・ダントリー、相手やレフリーの裏をかくのが得意なビル・レインビアー、リバウンドを頑張るリック・マホーン、クレバーで努力家のジョー・デュマース、そして若かりし頃のデニス・ロッドマン等々が身体を張ったディフェンスでマイケル・ジョーダンのシカゴ・ブルズを撃破しました。
ピストンズはジョーダンにはシーズン中59得点されており、その対策(報復?)としジョーダン・ルールと言ふディフェンス・システムを敷きます。身体をぶつけたりするようなフィジカルな面は勿論ですが、戦術的に、ドライブを始めたらパスをしないジョーダンに対し、わざとドリブルのコースを空けて誘い込み、シュートに跳んだところを数人でブロックに跳ぶ、と言ふやり方です。
これがマンマと成功して、セミファイナルは5戦で終わることが出来ました。
そしてセルティックスを下してNBAファイナルへ進出です。
ちなみに、このシーズンのMVPはジョーダンが初めて受賞しました。
一方、ウエストはディフェンディング・チャンピオンのロサンゼルス・レイカーズが順当にファイナルへ、と言ひたいところなんですが、楽勝したのは第1ラウンドのサンアントニオ・スパーズ戦だけで、カール・マローン、ジョン・ストックトンの居るユタ・ジャズに4勝3敗、ウエスタン・ファイナルではマーク・アグアイアーやローランド・ブラックマンを擁するダラス・マーベリックスにも4勝3敗と苦戦してのファイナル進出でした。
ファイナルはLAで始まりましたが、アウェーのピストンズが先勝した後、レイカーズが2連勝して巻き返し、ゲーム4・5と連続で獲ったピストンズが王手をかけたゲーム6、これがこのファイナルのキーとなりました。
古くからのNBAファンなら記憶に残っていると思います。伝説となったアイザイア・トーマスの43得点です。勝てば念願の初優勝と言ふゲームで不幸にもトーマスは足首を捻挫してしまいました。
そこでベンチに下がったらそれだけの選手ですが、足を引きずりながらその後もプレーし続けて第3Qには25得点、これはNBAファイナルの1Qでの最高記録として未だに破られていません、トータルで43得点です。ワンプレーごとに痛みを感じているのが判り、見ている方も辛いものがありましたが、その不屈の精神には感服しました。
しかし勝負の女神はトーマスには微笑んでくれません。
最後はカリーム・アブドゥル・ジャバーにフリースローを2本決められて103-102で逆転負けとなりました。
最終のゲーム7、アイザイアは万全でない上に、レイカーズは「Big Game James」と言はれるジェームス・ウォージーが本領を発揮します。UNC(ノースカロライナ大)でもジョーダンと一緒に戦ったNCAA(全米大学選手権)決勝戦で28得点するなど勝負強いことで有名でしたが、36得点、16リバウンド、10アシストの大活躍。108-105で勝ってレイカーズは昨年に続いての優勝でトゥーピート(2連覇)を達成しました。
ちなみにウォージーのトリプル-ダブルは生涯でこの1回だけです(笑)
優勝後、コーチのパット・ライリーは「来年も勝ってスリーピート(3連覇)する」と言ひかけたところ、選手から口を押さへられてしまったとか。連覇するということは並大抵の努力じゃ出来ないと言ふことです。
ちなみにこの「スリーピート」と言う言葉はライリーの造語ですが、彼はこれを商標登録しました。
もし翌年勝ってスリーピートしたら、彼にはお金が入ってくることになります。さて。
88-89
このシーズンから新たにシャーロット・ホーネッツとマイアミ・ヒートが加わりました。
またNBA20年間プレーして6度のMVPを獲得しているスーパーセンターのアブドル・ジャバー42歳がこのシーズン限りで引退すると発表しました。
ジョーダンは3度目の得点王、マジックは2度目のMVPとなっています。
ピストンズはシーズンを63勝19敗と言ふ驚異的な成績で2位キャバリアーズを6ゲーム離してイースタン・カンフェレンスのトップでプレーオフに突入しました。
ただシーズン途中で、得点源だったエイドリアン・ダントリーをトレードで放出しました。これはディフェンスに重きを置くピストンズのスタイルとは合わなかったためですが、交換で獲得したマーク・アグアイアーはトーマスの親友と言ふことで、疑問が残るトレードとも言はれたようです。アグアイアーもボールを持ったら離さない点取り屋でしたから。
プレーオフでは全米の注目を浴びるパフォーマンスがありました。
ジョーダン・ファンならずとも良く知られている「The Shot」です。
前年もキャブスとプレーオフで死闘を演じたブルズでしたが、シーズンではブルズはキャバリアーズに6戦全敗していて前評判は芳しくありません。
しかしプレーオフは接戦で最終ゲームまで縺れ込みました。
そのゲーム5も残り3秒で99-100、ブルズ1点負けです。右センターライン付近からのスローインのボールを受けるのはジョーダン。2人のディフェンスに挟まれながらも右45でボールを受けたジョーダンはドリブルでマークマンのグレッグ・イーローを抜いて真横のフリースローライン付近へ。
そこでジャンプすると、抜かれたイーローが横から跳んでブロックを試みますが、後から跳んだ筈のイーローが着地してからジョーダンはややバランスを崩してシュート。
ボールが空中にある時ブザーが響き、ボードに時間切れの赤いランプが付く。
低い弾道のシュートは奥のリムに当たりネットに吸い込まれる。
ブザービーターの逆転シュート。ジョーダンならではのプレーといえるでしょう。
しかし続くイースタン・カンフェレンスファイナルでは宿敵とも言へるピストンズにまたも打ちのめされました。身体を張ったピストンズのジョーダン封じの前に、パスをしないでシュートばかりの悪い癖を突かれて敗退しましたが、今回は何かを掴んだようです。
一方ウエスタンはレイカーズが57勝25敗、2位フェニックス・サンズを2ゲーム離しての首位でした。
NBAファイナルは2年続いてのレイカーズ-ピストンズです。
前年はピストンズが怪我に泣き、今度はレイカーズが怪我に泣く番です。
ゲーム1ではバイロン・スコット(現ホーネッツのコーチ)がつま先を、ゲーム2では大黒柱マジック・ジョンソンが膝を痛めました。
数年前であればアブドゥル・ジャバーさえ居ればどうにかなったでしょうが、スタメン2人を欠いては話になりません。
その上ピストンズはジョー・デュマース(現ピストンズ、バスケットボール・オペレーション社長)が大当たりで、デトロイトから始まったファイナルはデトロイトへ帰ることも無くピストンズがスイープ(全勝)で初優勝しました。
昨年と今年で怪我をして負けた両チームのスター達、実は大の親友同士なのです、皮肉ですね。
ライリーのスリーピートの夢は破れ、ビジネスもご破算でした(笑)
「バッド・ボーイズ」、ピストンズの大暴れはまだ続きます。

