2008年2月14日
マジック・ジョンソンとラリー・バード(3)
マジックが天性の明るさと人懐っこい性格なのに対し、田舎育ちで朴訥なバード。ノールック・パスやショータイム・バスケットで素人に魅せるバスケットをするマジックに対し、バスケットを良く知った玄人好みのバスケットを展開するバード。
この対照的な二人は学生時代から全米でも有名なライバル関係にあり、NCAAファイナルやファイナルを含んだNBAでのゲームを通して接点はあったものの、コート外では友人と言ふわけでは有りませんでした。
その二人が私生活で仲良くなったのは84年のコンバース社のCM撮影でのことです。
CM撮影と言ふのは、私も経験が有りますが(別に私が出演したわけじゃないですよ、アドバイザーとして参加しただけです)実に暇な時間が多いものなんです。リハーサルに入るまでが長いですから、その上1回リハーサルすると、照明の位置を変えたり、後ろのセットの修正や変更で30分から1時間程度は楽に掛かりますが、それを何回となく繰りかえされるので、役者は暇を潰すのが大変です。
バードとマジックもその時に色々とバスケットの話をして、相通ずるところがあり、仲良くなったと言はれます。
NBAの2大スター競演のCM(映画「OK牧場の決闘」を連想させるシーン)が茶の間に流れたことで、NBA人気向上に大きな役割を果たしたと言はれています。
更にNBAに追い風になったのが新コミッショナーに弁護士のデビッド・スターンが就任して、新感覚の人気拡大策を打ち出したことです。それは1992年バルセロナ・オリンピックへのドリームチーム参加に繋がる「世界戦略」と言はれるものです。
そしてもう一つの追い風は84年夏のドラフトです。
この年は新人の当たり年と言はれ、後世に名を残す名選手がドラフト指名されています。
1位 アキーム・オラジュワン/213cm/ヒューストン大/ヒューストン・ロケッツ
2位 サム・ブーウィー/215cm/ケンタッキー大/ポートランド・トレイルブレイザーズ
3位 マイケル・ジョーダン/198cm/ノースカロライナ大/シカゴ・ブルズ
4位 サム・パーキンス/205cm/ノースカロライナ大/ダラス・マーベリックス
5位 チャールズ・バークレー/198cm/オーバーン大/フィラデルフィア・76ers
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
16位 ジョン・ストックトン/185cm/ゴンザガ大/ユタ・ジャズ
中でも3位マイケル・ジョーダンは説明の必要も無いほど全世界でのセレブとなって、世界にバスケットとNBAを広めた男として知られます。
他の選手も今後のHistoriviaで出てきますから、覚えておいてください.
そんな優秀なルーキーを加えた84-85シーズンを検証する前に、ロサンゼルス・オリンピックのことに少し触れなくてはいけません。
ジョーダン、パトリック・ユーイング(213cm/ジョージタウン大)、クリス・マリン(198cm/セントジョーンズ大)達、後のドリーム・チームメンバー3人を含んだこのUSAチームは、準々決勝で西ドイツに78-67だったのが最少得点差で、それ以外は30点以上離すことも多く、対スペインの決勝戦も96-65と圧勝して優勝しました。
とは言へ、それでもバスケットボールファンの注目の的は、84-85シーズンのセルティックス−レイカーズのマッチアップでした。
マジックを筆頭に、38歳になった218cmカリーム・アブドル・ジャバー、前年はファイナルで怪我をして雪辱に燃えるショータイム・バスケットの特急列車ジェームズ・ウォージー、3Pシュートの得意なバイロン・スコット、スピードあるセンターのボブ・マッカドゥー、ディフェンスの上手いマイケル・クーパー(彼はパンツの紐を外に長く出してるので有名でした)等々走ることの好きな選手が集まったレイカーズは62勝を挙げ、2位ナゲッツに10ゲーム差を付けてプレーオフに進出しました。
一方のディフェンディング・チャンピオンのセルティックスも好調でした。
バードはキャリアを通じて最高のシーズンとも言はれる28.7得点、10.5リバウンド、6.6アシストを記録したばかりじゃなく、ロバート・パリッシュ、ケビン・マクヘイル、デニス・ジョンソン、ダニー・エインジ等の活躍で63勝をあげてプレーオフ進出です。
NBA39年の歴史の中で、セルティックスvsレイカーズのファイナル対決はこれで7度目となります。もうこれは、完全に伝統の一戦といっていいはずです。
ところがレイカーズは8度(ミネアポリス時代も含む)を数える優勝経験の中で、セルティックスに勝っての優勝は一度もありませんでした。その上前シーズンは3勝3敗で最終戦にもつれ込むほどの接戦の末敗れてしまったので、彼らは1年中雪辱に燃え、世間もまたそう思っていたのです。
意気込んでボストンに乗り込んできたレイカーズでしたが、ゲーム1は148-114で大敗を喫しました。しかしこれがかえって彼らの闘志を煽ることとなりました。
ゲーム2はアウェーながら109-102で勝ったことが流れを戻すことになり、LAへ帰ってのゲーム3も136-111と大勝して2勝1敗とリードします。
流石にゲーム4はセルティックスが盛り返し107-105で2勝2敗のタイに持ち込まれたものの、ホームでの戦いはもう1ゲーム残っていました。ボストンで1勝した重みがここで効果を発揮したわけです。ゲーム5を再び120-111で取りました。
ボストンの人達がザ・ガーデンと呼ぶザ・ボストン・ガーデンは、未だ敵チームが優勝したことのないセルティックスの聖域です。3勝2敗と王手をかけてそこへ乗り込みです。
111-100でレイカーズが6ゲーム目で優勝を決めたとき、ザ・ガーデンは静まり返りました。
62年に初めてセルティックス−レイカーズがファイナルで対戦して以来23年目のことになります。
85-86シーズン、セルティックスは電撃トレードを敢行しました。81年ファイナルMVPのセドリック・マックッスウェルをクリッパーズに送り出し、獲得したのは77-78シーズンMVPのビル・ウォルトンです。高いバスケットIQと豊富な経験と高い身体能力を持ちながら、膝が弱く欠場の多い213cmのセンターとして有名な選手でした。
輝かしい実績を持つウォルトンがシックススマンとしてベンチに控えるほどセルティックスのメンバーは強固で、お陰で前シーズンを上回る67勝15敗と、大変な強さを発揮しました。
あのジョーダンはNBA入り2シーズン目です。開幕数日前に怪我しましたが、どうやらプレーオフには間に合いました。
どうにか間に合ったプレーオフの第一ラウンドでジョーダンは途轍もないことをしてしまいます。
セルティックス相手のゲーム2、ダブルオーバータイム(再延長)ながら63得点と言ふプレーオフ記録を打ち立てたのです。
それを見たバードは「彼はマイケル・ジョーダンの姿をした神に違いない」と言ふ有名な言葉を残しています。
結果的にはセルティックスが3勝0敗でブルズをスイープして、その後もアトランタ・ホークス、ミルウォーキー・バックスに勝ってNBAファイナルへ進出しました。
ところがウエスタン・カンフェレンスでは大変なことが起こっていました。2ピート(二連覇)を狙うレイカーズがヒューストン・ロケッツにカンフェレンス・ファイナルで1勝4敗と言ふ惨敗を喰らい敗退したのです。
ロケッツ、二度目のファイナル出場となりますが、このチームは凄い武器を2枚持っていたのです。一人は83年のドラフト全体1位、バージニア大時代から騒がれていた大物ラルフ・サンプソンと言ふ220cmのフォワードです。
そしてもう一人がその翌年の全体1位のオラジュワンです。
ドリーム・シェイクと呼ばれるスピードのあるピボット・ターンと柔らかいシュートタッチが武器で、サンプソンと組んで「ツイン・タワー」を形成しました。220cmと213cmとセブンフッターが二枚居てはさすがのアブドル・ジャバーも防ぎきれません。
ところがファイナルの相手セルティックスはインサイドに216cmパリッシュ、208cmマクヘイル、213cmウォルトンと3人も経験豊富な人材を揃えていて、彼らがボールを持った二人に対してダブル・チーム、時にはトリプル・チームであたれば、いくら才能があってもNBAの経験が2年にも満たない二人にはかつてない重圧となって襲い掛かりました。
ホームコート・アドバンテージもあってセルティックスは4勝2敗で16回目、そして最後となるNBAチャンピオンに輝きました。
86-87シーズンは、ディフェンディング・チャンピオンのセルティックスは59勝を上げたものの、ウォルトンとスコット・ウェドマンのベンチプレーヤーが怪我をしたため、主力選手のプレータイムが長くなってしまいました。
一方レイカーズはアブドル・ジャバーが40歳になったこともあり、マジックが得点する作戦に切り替えたのですが、これがアブドル・ジャバーの負担を軽くすることに繋がりました。
プレーオフでセルティックスは思わぬ苦戦を強いられます。カンフェレンス・セミファイナルのバックスに4勝3敗、力をつけてきたデトロイト・ピストンズとのカンフェレンス・ファイナルも4勝3敗で勝ったものの、2回も最終ゲームまで戦わなければならなかったのです。
一方レイカーズはカンフェレンス・ファイナルでシアトル・スーパーソニックスを4勝0敗とスイープして、早々とNBAファイナル進出を決めました。8度目の対決です。
1週間休めたレイカーズと2日間しか休みのないセルティックス。その上レイカーズのホームから始まるというアドバンテージもあり、レイカーズが簡単に2連勝しました。
そして2勝1敗で迎えたボストンでのゲーム4、大接戦で迎えた残5秒。105-106とレイカーズが1点ビハインドの場面で、マクヘイル、バード、パリッシュの3人のディフェンスが居たにもかかわらず、見事逆転勝ちを収め、前年の雪辱を果たして10度目のNBAチャンピオンとなりました。
しかし、新しい波はヒタヒタと押し寄せてきます。
