「成長した人」

2007年4月22日

若さのJOMOか、うまさの富士通か。WJBLファイナル第4戦


※映像はバスケットボール女子日本リーグ機構の特別なご理解とご協力を得て撮影されました。

Wリーグファイナルは、3年ぶりの王座奪還に燃えるJOMOと、天皇杯2連覇を達成、Wリーグ初制覇を目論む富士通との対戦になりました。
ベストオブ5(3先勝方式)にて行なわれたプレーオフ ファイナルは、5戦目まで持ち込まれる白熱したシリーズとなりました。
私も感じたように、富士通が3戦目にして優勝に大手をかけた状況には、誰もが富士通の優勝と思ったのではないでしょうか?
結果は2連敗したJOMOがその後切れることなく3連勝をあげて見事に逆転優勝。今までのファイナルにはなかったことです。

3戦目、勝てば初の栄冠に輝く富士通に対し、JOMOは底力を見せてくれました。前半こそリードされたものの、第3クォーターの出だしから激しいマンツーマンディフェンスで富士通を苦しめ、ついに逆転、さらには9点差のリードを奪います。

富士通は第4クォーター開始早々にゴール下の守護神・三谷選手を5ファウルで欠き、追いつめられます。それでも主力陣が踏ん張り、3点差以上開くことがないゲーム展開に。
しかし、富士通は残り1分を切って大黒柱の矢野(良)が痛恨の5ファウル。一進一退の攻防を制したのはJOMOでした。

崖っぷちからつかんだこの1勝は非常に大きく、この試合の内容が彼女たち自身の持ち味を再確認することになったのかもしれません。
アグレッシヴなディフェンスからの速攻や、192cm山田久美選手の高さを活かしたプレー、3ポイントシュート、大神選手のリード…。これが選手一人ひとりに「こう戦えばいいんだ!」「自分たちらしいバスケをしていこう!」という自信へとつながり、若いJOMOの勢いへと変わっていったのだと思います。

私は解説席から試合の行方を見ていましたが、TIP OFF直後からのJOMO勢いには驚きました。
研ぎ澄まされた集中力と何よりも自分たちの手で勝利をつかむんだという気迫。ファイナルを通してJOMOヘッドコーチ・内海知秀氏もおっしゃっていました。
選手が試合の中で成長し、どんどん自信をつけていった、と…。インタビュー映像からも、選手の表情、話す言葉からもおのおのが自信を持ち「勝つんだ、優勝するんだ」という思いがヒシヒシと伝わってきませんか?

試合を積み重ねるほどJOMOはパワーアップ。シーズン中はミスが出ると立て直せなくなってしまうところがありましたが、流れが相手に傾きかけても自分たちの力で取り戻す。
フリースローも確実にきちんと決めていました。ベテラン揃いの富士通でさえも、彼女たちJOMOの勢いを止めるまでにいかなかった、ということです。

終了後のインタビューが印象的でした。
富士通、中川文一HC、矢野良子選手、船引かおり選手が「それぞれが勝とうという気持ちが伝わってこなかった。コートの5人が同じ気持ちになれなかった」と口を揃え、さらに数々の優勝経験を持つ矢野選手は「ファイナルはとにかく勝ちたい、何が何でも勝つんだと強く思ったチームが勝つ」と話していました。

JOMO、立川真紗美選手も「勝ちたい、とにかく勝ちたい気持ちで身体が動いていたような気がします。富士通よりも勝ちたい気持ちがほんのちょっぴり上だったかもしれません」とコメント。

経験、技術、戦術何をとっても富士通の方が上回っていたのかもしれません。
しかし強いメンタルを持たなくてはいけない状況に置かれたときにチーム全体で立ち向かい、自分たち本来のプレースタイルを貫くことができれば、格上の相手にも勝つことができる――。
ファイナルは、レギュラーシーズンとはまたひとつ違った環境の戦いです。

富士通の船引選手は「オールジャパン、レギュラーシーズンやセミファイナルと違い、ファイナルは別モノ。雰囲気、試合に臨む気持ちが本当に違う。すごくよい経験になりました」と語っていました。ベテランでさえ感じた重みのある言葉ですよね。

王座奪還を果たしたJOMOでしたが、彼女たちは3年前には下級生としてコートに立ち優勝を味わったメンバーであり、その後ベテランの引退や矢野良子選手の移籍もあって、なかなか勝てなくなったと言われたメンバーでもあります。
そのメンバーで手にした勝利は、彼女たちにとっての初優勝にも等しいものだと思います。それを自信にしてさらなる飛躍、活躍を期待したいです。

haradayuka at 17:15|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)
プロフィール
原田裕花
1968年生まれ。山口県出身。元バスケットボール日本代表。ジャパンエナジー(現JOMO)、代表でキャプテンを務めるなど、80年代後半から90年代後半にかけて女子バスケ界を牽引した。アトランタオリンピックで7位入賞。また二度の膝靭帯断裂から見事復活し、カムバック賞を受賞。現在はスポーツキャスターとして活躍中。
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