2008年2月19日

早稲田大学・近森裕佳の思い(後編)



早稲田の絶対的なエースとして活躍した近森選手。そのプレーには時々エースとしてのプレッシャーが見えました。

リーグは特にそのことで悩みました。
点差が開いたり自分へのマークがきつくなったら、周りのサポートが必要になるじゃないですか。でも、試合を通して僕ばかりが攻めているので、周りに少ない機会で結果を残せっていうのは酷なのかな、と感じていて…。
監督には「アシストを意識しろ」と言われてプレーしていたら自分がリズムがどんどん崩れてしまって、一時期それでどうしたらいいかわからなくなって、すごく悩みましたね。
スタッツを見ても僕のシュート数だけ異常に多いじゃないですか。それで勝てばまだ問題ないですけど、「40点とってもチームは負けました」だったら、40点取ろうが何しようが、一番多く攻めているのに一番失敗している自分のせいだって思っていました。

だからいつも「もう一人スコアラーがいればな」って思っていました。リーグでは井手(勇次・1年)が頑張ってくれたんですけど、やっぱり苦しいときになったら一年生に自分と同じものを求めるのはかわいそうだし、山田(純也・2年)も今年はあまりうまくプレーできなかった。
 その中でインカレでは風間(俊亮・4年)がやっと自分らしいプレーを見せてくれたように思います。
インカレでは僕が無理しなくても風間が点をとってくる。あとは井手もいる。チームで攻めているという感じが出たと思います。
風間のバスケセンスは早稲田の中でも1,2番なので、インカレで風間の良さが見ている人にも伝わったと思うと嬉しいですね。

自分でしか得点を稼げないという状況に、当然ながら少なからずフラストレーションもたまっていました。しかし、近森選手はその苛立ちを、他人でなく自分へ向けていました。この考え方は4年間で築かれたものだと話します。

練習中は色々言いましたが、それよりも自分がもっとできなかったかなって考えていました。
中学高校のときは「自分が目立ってナンボだ」って思って、自分勝手にプレーしてましたよ。大学1年のときも割と自由にやっていました。
でも、学年を重ねて、今度は自分が中心になったとき、自分勝手なプレーはできないなと考えるようになりました。
ひとつひとつのプレーに責任を持たなければならないし、シュートもミスを少なくしたかった。
そのことを4年になって一番考えました。まぁ結局ガンガン攻めてましたけどね(笑)

1年生のときは本当に生意気でしたね。
リーグ戦の日体戦のときに終盤の接戦でタイムアウトになったんです。その日は賢伸さん(高木・横河電機)がバカ当たりしていたので「賢伸をフリーにして打たせるぞ」って話し合ってたのに、僕は1年の分際で「俺空いてたら打ってもいいんですか?」って言って「お前何言ってるの」って先輩に言われました(笑)
1年のときは本当に遠慮がなくて、賢伸さんや洋介さん(菅原・レラカムイ北海道)によく怒られましたね。僕が4年でそんな1年が入ってきたマジでキレますよ(笑)

4年間一緒に戦ってきた4年生とは固い絆で結ばれました。「今年の4年生は結束力が強い。」どの選手も自信を持ってこう話していたのが印象的でした。

早稲田に入って、今の四年の代でプレーできてつくづくよかったなって思います。高校のときの僕は、「頑張るなんてめんどくさい」みたいなタイプだったんです。
ウェイトトレーニングを頑張るようになったのも同期のおかげ。1年のときはウェイトを全くやってなくて、すごい頑張っていた竜二(高橋・4年)に向かって「全然意味ないよ」って馬鹿にしてたサイテーなやつだったんです(笑)
その後スプリングキャンプや試合の中でウェイトの重要性というのを感じて、竜二と一緒に筋トレを始めて、それでだいぶ変わったかなって思います。
ふざけるときはふざけるけれど、やるときはみんな真面目に頑張って、そういうとこですごい影響される部分が多かった。感謝しています。

2年の春、ジェリコ・パブリセビッチ前日本代表監督が提案したスプリングキャンプに呼ばれたことで、バスケット、日本代表への意識が変わった。以前他のインタビューでこう話していた近森選手。しかし、大学最後の年、彼は李相佰日本代表から落選。辛い時期を過ごしたと言います。

(李相佰代表は)スプリングキャンプに行って僕の中では自信あったし、落ちたことに納得できないって気持ちがとても強かったです。ちょっとバスケが嫌になってしまいました。バスケをやっている以上は、一度でいいから日の丸を背負って戦ってみたいっていう気持ちがあったので、オフは休日返上でトレーニングやって選考に備えて…結果がそれだったんで。
でも、李相佰落選は僕の個人的な事情であって、チームはシーズンが始まったばかり。個人的な理由で周りに悪影響を与えるのが一番意味がないし、スプリングキャンプに呼ばれても意味がないって思って気持ちを切り替えました。
周りも「リーグとかトーナメントで見返してやればいいじゃん」ってすごい励ましてくれて、確かにそうだなって思いました。
まぁすごい悔しかったけど、それをバネに頑張れたからよかったかなって思います。
しかも僕は幸運にも、これからはA代表に選ばれる環境に身を置くので、狭き門ではあるけれど、心のどこかにおいて、いつか達成したいなとは思っています。

ということで、近森選手は来年からJBL・日立サンロッカーズでバスケットを続けます。若手中心のチームながら、オールジャパンではベスト4に食い込む活躍を見せた日立で、まずはスタメン獲得に向けての戦いが始まります。

日立は若い選手が多いから、そこで競争に負けたら長いこと出られなくなると思います。
早稲田の代表として、色々な人の期待を背負ってチームに入るので、僕が試合に出て少しでも頑張ってる姿を見せることで恩返しができればと考えています。
今までのバスケットとはケタ違いにレベルが変わるシビアな世界。難しいことだってわかってるけれど、臆せずに自分の強気な性格を生かして頑張りたいです。

目標は、まずは日本一になること。そして、日本代表に入ってプレーすることです。
高校のときにウィンターカップでベスト8に入って、早稲田では関カレで準優勝。「これは届かないところじゃないな」ってことがわかったので、じぶんが現役である限り目標においてやっていきたいなと思います。
日本一になるって感覚はきっと特別なもの。自分はバスケットを続けてきて、これからもずっと続けていくわけだし、その中で極めたいっていう気持ちが年々強くなってきています。
昔はそんなこと全然思わなかったです。中学からバスケットを始めて、今が一番「うまくなりたい」って感じていると思います。
年々上の舞台を見る機会が多くなってきて、そういうのを見れば見るほど気持ちが高まってきて…。もっとうまくなりたいな、試合に勝ちたいなって思うようになりました。そういう気持ちが続く限りバスケットを続けていくんだと思います。

「最後に思い残したことがあれば」と、たずねると「後悔」について語りだした近森選手。4年間彼を取材して、「悔い」という言葉がまぁよく出てくる選手だな、と感じていました。しかし、それは決してネガティブなことではありません。きれいごとのない現実をしっかりと受け止めて、そこから戦う…。近森選手の発する「悔い」は、人間としての彼の強さが込められたポジティブな言葉だと知りました。

悔いは絶対残るもんだと思うんですよ。
よく「負けたけど悔いはありません」とか言いますけど、そういうことは所詮きれいごとだと思っています。
どういう形であれ悔いは残る。それを次にどう生かすかが大事なんです。
後輩たちには今、悔しい思いをして春に向けて頑張っていると思うけれど、大学4年で感じたのは、「練習でやったことしか試合では出ない」ってこと。
「試合に悔いを残さないように」って考えるんじゃなくて、毎日の練習とかそれぞれの関わりから大切にしてほしいです。
これは早稲田の後輩に限らず、バスケットに限らず、違うジャンルで頑張ってる人にも言えることだと思います。

悔いが残らない人生なんかない。それをモチベーションに変えることが一番重要なんです。人生ポジティブにいかないと楽しくないと思うんで。悔いをポジティブなものに変えて、還元して頑張っていくことがバスケにおいても人生においても重要じゃないかなと思います。


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近森裕佳(ちかもり・ゆうか)
1985年6月26日、東京都出身
ひばりが丘中→國學院久我山高→早稲田大
体の強さと「何が何でも決めてみせる」というシュートへの意欲が光るフォワード。
来年度からはJBL日立サンロッカーズでプレーする。
ちなみに「裕佳」という珍しい名前の由来は「偉いお坊さんにちなんで名づけられたと思うけれど本当のところはよくわからない」とのこと。
この変わった名前を本人もとても気に入っているらしい。
191センチ、89キロ。


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この記事へのコメント

1. Posted by 愛子   2008/02/19 23:55:43
いつも楽しく拝見させていただいてます。

大学バスケを観に行っているうちに
すっかり近森君のファンになってしまい
その上、応援している日立への入団、とっても嬉しく思っています。

インカレ最終日、帰りの電車で早稲田大学のメンバーと同じ車両でした。後悔はあったでしょうけど、ほっとしたような優しい笑顔の近森君でした。

これからも頑張ってほしいです。
目標の日本一、ぜひ日立でかなえてください!
応援しています。
2. Posted by 青木美帆   2008/02/29 23:55:08
愛子さん、はじめまして。

近森選手のファンなのですか!
私自身も、一観戦者として彼の大ファンなのでうれしいです(笑)

残念ながらインカレは結果はついてきませんでしたが、試合が終わったあとの選手の表情が晴れやかだったのが印象的でした。苦しんだ末に、ようやく楽しいバスケットができたのではないかな、と思います。

これからも一緒に応援していきましょうね。

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プロフィール
青木美帆/Miho AWOKIE
1984年生まれ。早稲田大学卒業。早大体育会の報道紙「早稲田スポーツ新聞」でバスケットボール部を担当したことをきっかけに、在学中からバスケットボールに関する取材活動を開始。現在はフリーのバスケットボールライターとして中学バスケットボール(白夜書房)、FreeBas.(フリーペーパー)などで執筆中。周りからはさんざん「無謀だ」と言われていますが、体当たりで頑張っています。
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