2007年12月5日

インカレで見せた4年の底力

先週は大学生最大の大会、インカレ(全日本学生選手権)が開催されました。
女子のトーナメントは名古屋で開催されたため取材に行けなかったのですが、男子はしっかり見てきましたよ。
ベスト8までの順位は以下のとおりです。
優勝 青山学院大学(7年ぶり)
準優勝 法政大学
3位 大東文化大学
4位 東海大学
5位 日本大学
6位 早稲田大学
7位 筑波大学
8位 明治大学

2メートルツインズ、竹内公輔(アイシン)、譲次(日立)を始め、スケールの大きな選手が多かった昨年の4年生に比べ、今年の4年生は少し地味で控えめな印象。さらに下級生主体のチームが多く、主力としてゲームに出場する4年生自体それほど多くありませんでした。「今年のインカレはあんまり面白くならないかもな。」そんなファンの声もあちこちから聞こえていました。

しかし、そんな声を裏切り、今年のインカレはとても充実したものになったと思います。

準決勝の法政-東海戦は、なんと3度にわたる延長戦の末に決着のついた激戦でした。私もトリプルオーバータイムの試合なんてはじめて見ましたし、選手も経験がなかったそうです(東海大・陸川監督は経験アリとのこと。さすがです)決勝も最後までわからない展開になり、会場からは悲鳴に近いような歓声が飛び交いました。

今年の4年生は確かに地味な印象をぬぐえません。しかし、その分彼らは地道な努力を積み重ね、最後に美しい花を咲かせたのです。

特にそれが顕著だったのが準優勝の法政大でした。彼らは以前から、体育館が2時間半しか使えないという過酷な環境の中でバスケットをせざるを得ませんでした。練習不足を選手個人の能力でなんとかカバーしている。そんな状態がここ数年続いています。

今年もそれは変わりませんでした。しかし、春先、今井ヘッドコーチのもとに4年生が集まりました。
「僕らはチャンピオンになりたい。だからこれまでとは違ったことがやりたいんです。」
そう伝えたそうです。

「3年のときに上の代を見ていて、東海や青学みたいな強いところは走るしフィジカルも強い選手が多かった。だから僕たちもそのレベルまで行こうと4年生全員で話し合いました。」(高橋優キャプテン)
「キャプテンが今年はしっかりやろうと話してくれて、みんなで頑張ろう、チームカラーを少し変えようと決めました。個人の基礎的な部分が伸びれば、あとのプレーはみんな持っている。いい練習をしようとみんなで頑張ってきたという感じです」(福田大佑選手)

そのためには辛く、きつい練習にもすすんで取り組んできました。
夏の合宿では今井ヘッドコーチも「こいつら馬鹿じゃないのか」とあきれるほどたくさん走り込みました。

さらに、毎日練習を見られない今井ヘッドコーチの代わりになればと、副キャプテンの佐藤俊二選手がアシスタントコーチに就任。選手としてロースターに入るだけの力を持ちながら、チームのためにスタッフ側に回った佐藤選手の存在は、このチームにとってとても大きなものだったと、選手、ヘッドコーチともに話していました。
法政は信平優希選手、神津祥平選手ら、下級生にスーパースターが揃うチーム。
「一戦一戦勝ったことによって全員の意識が変わってきたと思います。下級生には4年生の気概を引き継いでいってもらいたいですね。何せ、ここまで来たところを下級生はずっと見てきたんですから。」と今井ヘッドコーチは話していました。

優勝した青山学院にしても、春のトーナメントではまさかの初戦敗退。一番重要な夏の練習では長谷川ヘッドコーチ、吉本トレーナーを代表招集で欠き、自分たちで練習を作り上げなければなりませんでした。「春に負けて、長谷川さんがいないという危機感が、リーグとインカレの成績につながったのかもしれません」(広瀬健太キャプテン)

大東文化大学は3年のときに2部落ちを経験しています。そこからチームを盛り立てて、1部復帰、さらに2部所属校ながらトーナメント優勝、インカレ3位という素晴らしい成績を残しました。

「1〜3年は、結果が全然ついてこなくて嫌な状態が続いていたけど、絶対最後にいいプレーを見せるためにトレーニングを続けてきました。それがこういう結果につながったと思います。」(竹野明倫キャプテン)

「1年のときはBチームで、2年はメンバーに入っても試合には出られなかった。3年になってようやく試合に出られるようになったら2部落ち。来年はどうなるかっていう不安ばっかりでした。でも、『4年になったらやってやる』という気持ちだけでここまでやってきたので、1年は試合に出られなかったから悔いが残るっていうのはない。精一杯やりました。」(MIP、優秀選手賞、得点王、スリーポイント王、ディフェンス王を獲得した阿部友和選手)

東海大学のキャプテン小林慎太郎選手は、シーズン当初のケガが癒えず、一年間ほとんどコートに立つことができませんでした。しかし、そのショックをおくびにも出さずどんなときでもチームを笑顔で盛り上げ、試合の合間には後輩の足のマッサージ役を買って出る光景もありました。

4年生が主力だった早稲田大学は春の準優勝から秋に大失速。主力のケガも多く、入れ替え戦では想像もできないような惨憺たる内容で2連敗を喫しました。そこから「本来の自分たちを取り戻して最後のインカレに望みたい」と4年生で話し合い、練習メニューも自分たちで組みなおしました。シューティングの結果はしっかりデータとして残し「何本入るまでに何本を要した」という細かいところまで一人ひとりがきちんと管理。体育館の撤収時間を過ぎても個人練習に取り組みました。

このように、彼らは学生最後の舞台に向けて、試合に出る/出ない、ベンチ入りしている/いないを区別せず、全員がそれぞれの場所で精一杯戦い抜いてきました。負けたチームは当然悔しいでしょうが、それでも「やりきった」という晴れやかな表情を多くの選手が見せていたことがとても印象的です。

日本学生連盟の強化委員長、ユニバ代表のヘッドコーチをつとめている青山学院大・長谷川ヘッドコーチは言います。
「今年一年学生全体を見ていましたが、まず私は青学の監督なので、うちの4年生が頑張ることが学生界の向上につながると思ってやってきました。でも法政の深尾もよかったし、東海の小林はベンチでいつも精神的な柱になった。石谷も春からとても成長した。日大の斎藤も頑張ったし、大東はあの二人(竹野、阿部)を筆頭としてまさしく大活躍を見せた。そういう意味で、一生懸命さは去年の4年生からきちんと受け継がれているんだなという気がしました。去年の4年生は能力もあったし真面目にトライするという気持ちも持っていました。それをちゃんと今の4年生も引き継いでいるというのが現在の学生界。とてもたくましく感じています。」

法政・今井ヘッドコーチも話していたように、下級生はこの4年生の頑張りをずっと一緒に見て、一緒に戦ってきました。4年生が残したものはしっかり後輩たちにも受け継がれていくでしょう。

学生最後の戦いの舞台は元旦から始まるオールジャパン。彼らはきっと、格上の相手に対して決してあきらめず、ひるまず、最後まで戦いを挑むでしょう。ぜひ足を運んで、彼らの最後勇姿を心に刻んでもらいたいです。

*****************************

■お詫び■
前回の記事中、東京アパッチの青木康平選手のbjリーグキャリアハイが、今シーズンの「30得点」という表記がありましたが、これは誤りでした。青木選手の正しいキャリアハイは、先シーズン新潟戦でたたき出した「38得点」です。誤った情報を記載したことをお詫びして訂正申し上げます。


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この記事へのコメント

1. Posted by 亀ンパス [HP]   2007/12/07 13:03:11
はじめまして。
青木さんほどバスケに詳しい訳ではないのですが、子供がバスケおばかです。子供を通じて知っていた程度なのですが、エヴェッサを通じて、その仲間とバスケを始めています。
このインカレ男子は関西勢全滅!!で少し寂しかったですが、女子(大体大)が制したので、よかったかとも。。と思ったりしています。
これからも楽しみに読ませていただきます。
*子供が大体大1回生でバスケ(PG)やってます。
 ついていくのが精一杯のようですが。。。
2. Posted by 青木美帆   2007/12/13 11:40:59
亀ンパスさん、はじめまして。

インカレは毎年関東勢が上位を占めるので、関東のバスケットを見ているものとしては一年通しておなじみの顔ぶれの上位対決…というのもちょっと味気なく感じております。
関東の大学に優秀な人材が多く集まるので仕方がないことなのかもしれませんが、大学界全体の活性化を考えると、まずは関西勢に頑張ってもらいたいものです。

女子はレベルが均等化しているので毎年「ああ、まさしくインカレだなぁ」という気持ちで取材していたのですが、今年は愛知…これも活性化のためには仕方がないことですが…見たかったです涙

お子様、名門でバスケットされてるんですね!
いつか取材させてもらえるかな??
頑張ってください!

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プロフィール
青木美帆/Miho AWOKIE
1984年生まれ。早稲田大学卒業。早大体育会の報道紙「早稲田スポーツ新聞」でバスケットボール部を担当したことをきっかけに、在学中からバスケットボールに関する取材活動を開始。現在はフリーのバスケットボールライターとして中学バスケットボール(白夜書房)、FreeBas.(フリーペーパー)などで執筆中。周りからはさんざん「無謀だ」と言われていますが、体当たりで頑張っています。
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