2008年5月10日
バスケの未来とbjリーグ
プレイオフ決勝は大阪-東京というカードになりましたが、このゲームは、見ているほうも、そしておそらくプレーしている選手もとにかく疲れる試合だったことでしょう。(大阪・天日ヘッドコーチも記者会見で「疲れました」と話していました)
大阪も東京もディフェンスがいいチームというよりも「オフェンス先行型」「爆発力がある」というイメージが強いチームですが、この試合は違いました。互いに素晴らしいディフェンスを展開し、一歩もひかず、相手に一気に流れを持っていかれるということもほとんどなく、終始シーソーゲーム。スタッツも両チームともにほぼ同じで、本当に「ちょっとした差」が大阪に傾いただけのゲームだったな、と感じました。
東京アパッチは開始1分で青木康平選手が負傷退場。(青木選手は全治一ヶ月の眼底骨折とのこです)ジョー・ブライアント監督は「彼を失ったことは15〜20点を失うのと同義」と、青木選手の負傷退場を非常に残念がっていました。戦いに「たられば」は不要ですが、個人的にも、青木選手がコートにいたら、このゲームは変わっていたのだろうなと感じます。
ということで、bjリーグは、このプレイオフを持って今シーズンのゲームが全て終了しました。
このシーズンを見ていて私が強く感じたのは、日本人選手の成長ぶりです。
「オンザコート2」の規則を設けているJBLに対し、bjリーグは、コート上の外国人選手に制限が設けられておらず、リーグ発足当時から大きな話題を呼んでいました。初年度のシーズンが始まってみると、得点の大半を外国人選手が占め、日本人選手の得点は出場した選手全員を合わせて10点未満、なんてこともザラでした。アワード、ランキングも外国人選手がズラリを名を連ね、「このリーグは大丈夫なのか…」という不安が頭をよぎったこともありました。
しかし、シーズンを重ねるごとに、日本人選手は変化していきました。
当初は大型外国人の壁に戸惑うばかりの彼らでしたが(bjリーグは4番5番ポジションのみならず、1番にも190センチを超える外国人選手が多数所属しています)、次第にその高さや体の強さ、身体能力にアジャストしていったのです。
例えば新潟の小菅直人選手、池田雄一選手、東京の青木康平選手や牧ダレン聡選手、高松の岡田優選手、大分の与那嶺翼選手、仙台の高橋憲一選手などなどなど、試合を見てもスタッツを見ても、着々とレベルアップしているのが目に見えて、とても嬉しいです。
東京の仲摩純平選手は、ファイナルで大阪のマット・ロティック選手に対し、ボックスワンで徹底マーク。素晴らしいディフェンスを見せ、オフェンスでもドライブなどで魅せました。
「ボックスワンを指示されたのは今日(試合当日)でしたが、前から「そうじゃないか」と思っていたので、指示されても慌てることはありませんでした。マットは本当にいい選手だから、そういう選手にマッチアップできる楽しみのほうが勝っていましたね。bjリーグでプレーするのももう3年目なので、外国人選手へのマッチアップを『怖い』なんて思ったら引退するしかないですよ(笑)」と、なんてことなく、淡々と語っています。
セミファイナルにて大阪と対戦したライジング福岡、竹野明倫選手は、173センチと小柄ながら果敢に攻め気を見せ、4クオーターでは2連続スリーポイントを決め、6点差まで詰め寄りました。その後もリバウンドやスチールでつなぎ、勝利への期待を一気に膨らませた張本人として活躍を見せました。
「アーリーチャレンジで福岡に入団してみて、今は楽しく常に上を見て練習にも取り組んでいます。外国人選手の前でドリブルチェンジをしたら簡単に取られてしまうので、ひとつレッグスルーを入れてチェンジするなどの工夫が必要だと感じました。でも、シュートは狙っていけるし、うまくドライブで切り抜いていければレイアップまで持っていけます。相手を出し抜く手前での技の出し方を、来シーズンは極めていきたいです。ディフェンスは、相手の特徴を考えた上で、先手をとって動くことが大事だと思いました。並ばれたら確実にやられるから、先にコースに入り込むこと。どこの場所をということでなく、頭も含めた全体的な筋肉のレベルアップを計りたいです」(竹野選手)
普段のチーム練習でも外国人選手とのマッチアップで鍛えられているbjリーグの日本人選手たち。あとは、より多くの選手が試合での出場時間を伸ばし、実戦での経験をたくさん積んでいけば、ますますのレベルアップが期待できそうです。
bjリーグに外国人制限がないことは、様々な場所で色々な論議を呼んでいます。
「プロリーグなんだから、実力がある選手がたくさん入るのは当然じゃないの?」
「でも、外国人ばかりいるリーグって、なんか違和感があるよね」
私はやはり日本バスケットボール界の発展を願う人間なので、同じ日本人選手が成長し、レベルアップするのをリアルタイムで見つめられることは、とても幸せです。(それが「島国根性」ってやつなんだよと指摘される方もいるかもしれませんが…)バスケ後進国と酷評される日本ですが、いつの日か彼らが国際舞台で華やかに活躍してくれることを願っています。
毎日新聞の取材に対し、河内コミッショナーも「日本人をより強化する方策もそろそろ考えたい」と話していました。
最後にひとつ。
仲摩選手に話を聞いていて、非常に心に残る言葉がありました。
「まぁこういう仕事だから追い込もうと思ったらいくらでも追い込めるから…。どれだけ自分を追い込めるかっていうのが僕の仕事です」
「バスケは仕事である。」プロ選手としての自覚がこれほどにまで端的に表現された言葉を聞いたのは、これまでバスケット選手を取材してきて初めてでした。
前回のコラムで「バスケがアイデンティティの子供が誕生することを願う」と書きましたが、このように後天的ではありますが、深層心理から「バスケット」というアイデンティティが構築されている日本人が、着々と誕生してきているんですね。なんだか感動してしまいました。
ブースター文化、選手のアイデンティティ、リーグ・チーム関係者の夢と野望。
bjリーグを取材してきて、日本におけるバスケット文化の芽生えを感じています。
来シーズンからは滋賀と浜松が参戦し、ますます広がっているbjの輪。
(浜松の中村和雄ヘッドコーチは、日本バスケ界には数少ない名コーチのひとり。ファイナル終了後に行われた記者会見で「最初から優勝を狙う。どんな手を使ってでも、この場(ファイナル)に来たい」という非常に力強いコメントを残しています。また一人、bjリーグに強烈な個性の持ち主が現れましたね!)
どうかこのまま、バスケットボールの輪が広がり、つながり、大きなムーブメントとなるよう。
心から祈っています。
さて、シーズンが終了したのと同時に、このコラムも終了となります。
これまで読んでいただいた方、お付き合いいただき本当にありがとうございました。
点数表記の誤りなど、あってはならないミスがあったことは、今でも反省しています。申し訳ありませんでした。
このコラムは終了しますが、これからもあちこちのバスケ現場に足を運びます。
また、いつか、どこかでお目にかかれることを楽しみにしています!
青木美帆
2008年4月30日
原点としてのストリートボール
日本初(おそらく)のストリートボール情報ウェブマガジン「Breakin'」が25日に創刊しました。
http://www.brkn.jp/
このサイトは、SOMECITYやLEGEND、以前このコラムでも取り上げたALLDAYなどのイベントレポート、ボーラー(選手)のインタビュー等を通して、より多くの人々にストリートボールに親しんでもらおうというコンセプトのもと、立ち上がりました。
私も創刊号の企画段階から関わっていまして、何本か記事を書かせていただきました。
プロへと巣立っていったボーラーとして、東京アパッチの青木康平選手、岩佐潤選手のスペシャルインタビューも掲載されています。是非ご覧になってください。
さて、この「Breakin'」のお仕事を請けたあと、当然ながら様々なストリートイベントを見て、ストリートで生きる人の話を聞いて、ストリートボールのことを考えました。特に一生懸命考えたのは創刊号の特集にもなっている「ストリートボールって何?」という命題です。
「ストリートボールって屋外のコートでプレーすることじゃないの?」
答えはNO。なぜならば屋外施設で行われるSOMECITYやLEGENDもれっきとしたストリートボールです。本場アメリカのAND1ミックステープツアーも屋外で行われています。
「なんか派手なことするやつでしょ?股抜きとかドリブルで魅せるやつ。」
これもNOです。競技バスケと同等に、堅実なプレーで人気と注目を集めるボーラーもたくさんいます。
じゃあ一体ストリートって一体何なのさ!?と、結局堂々巡りになってしまうのですが、青木康平選手のある一言に、胸をコツンと動かされました。
「ストリートボールは『原点』だと思います。」
日本の子供がお父さん相手にキャッチボールをするように、アメリカの子供は、近くの公園に設置されている果てしなく高いリングを目指し、父親を相手に1オン1を楽しみます。
スラムダンクの「小坊主」こと沢北栄冶は、生まれたときから皮のバスケットボールをおもちゃにして育ちました。家にはお手製のリング。毎日日が暮れるまで父親相手に1オン1を挑みました。
これがストリートボールの原点。
音楽にせよ、美術にせよ、各地の生活様式にせよ、文化と呼ばれるものは、私たちが生まれたときから自然と親しみ、無意識のうちに体と心の中に構築されていくものです。
つまり、ストリートボールとは、バスケットボール文化全体の象徴なのではないかと思うのです。
しかし、私がライター陣との打ち合わせ中この沢北の話を持ち出したとき、「でも、実際問題日本にはそれはないですよね。」と一蹴されました。
その通りです。たいていの人がバスケットを始めるのは、ミニバスや部活。原風景としてのバスケットではなく、チームという組織の一部としてのバスケットが体と頭に刷り込まれるわけです。
これでは日本にストリートボール文化どころか、バスケットボール文化が根付くわけがありませんよね。
私は日本にバスケットボール文化が定着することを心から願い、活動を続ける人間の一人でありますが、そのためには原点回帰しなければならない。
というよりも私たちの手で原点を作り出さなければならない、と気づかされたのです。
ストリートボールは「個」のバスケ。ボールを使っての自己主張合戦です。だからこそ、競技バスケットとはまた違う、選手一人ひとりの生の輝きがまばゆいばかりにせめぎあい、多くの人が惹きつけられるのだと思います。
バスケットに携わるすべての人たち使命。それは、バスケットボールで自己紹介できる子供たち、バスケをアイデンティティとする子供たちが、この先の日本にたくさん誕生する環境を作り上げることではないでしょうか。
2008年4月22日
ワイルドカードゲーム@代々木!
さてさて、行ってまいりました代々木第二体育館。
観客入場時間(14時)の30分ほど前に、原宿からテクテク歩いて行ったわけですが、原宿駅はガゼット(ビジュアル系バンド。第一体育館でライブやってました)のファンらしき黒尽くめの人たちが、アースデイにやって来たヒッピー風のおしゃれさんたちが、「150人花見」という謎の企画を開催している学生風のみなさんが、そしてワイルドカードを観戦しにきたバスケットファンのみなさんたちがと、もう駅を出るのにも一苦労の混雑ぶりでした(笑)
で、相変わらずたくさんいる黒尽くめの人たちを横目に石畳を歩いていくと…。
出ました、第二体育館に続く大行列!
岸体育館を軽く超えるくらいの行列は、なかなか壮観でした。試合開始予定時刻だった15時になっても観客が入りきらず、急遽20分遅れてのティップ・オフとなりました。
ただ、試合が始まって見ても空席がけっこう多かったのでいささか拍子抜け。リーグがリリースした観客数は2511人でした。試合概要が決定するのが遅かったから、まぁ仕方がないのかもしれないけれど、ちょっと残念…。
会場にはスポーツコートが敷かれ、すっかりbj仕様となっていました。しかし、「bj観戦と言えば有明」が定着している私は、天井から吊るされている得点板(適当な表現が見つかりませんでした)がなかったり、売店が一箇所しかないので大混雑だったり、会場の照明と木目が目立つ館内が日常感たっぷりだったり、フロアレベルが狭くて圧迫感があったりと、様々な違和感がありました。(マイクの音声がはっきり聞こえたのはとてもよかったです。)
今回の代々木開催は、リーグや選手、ブースターにとっても大きなエポックとなりましたが、実際にゲームを見てみると、やっぱり代々木は「アマチュアの聖地」であって、bjの聖地である必要はないなと感じました。
試合は序盤から東京が「らしさ」全開でぶっちぎり、103-88で新潟を破り、プレイオフ進出を決めました。青木選手の1対1に、ヘリコプターのダンクに、会場が揺れました。
一見自由にプレーしているように見える東京ですが、今回の新潟戦に向けて、分厚いスカウティングレポートを選手に熟読させたそうです。
ポイントはディフェンスでした。ジョー・ブライアントヘッドコーチは、新潟の正攻法である、ガードがボールを支配し、そこへディフェンスが寄ってきたら外にパスを出し得点するパターンに対し、ガードにヘルプを出さない、1対1で攻めさせるということを徹底しました。また、藤原選手に対して、岩佐選手とダレン選手にしっかりプレッシャーをかけて、起点をつぶすことを徹底させました。
しっかりした戦略に基づき、選手が持ち味を生かして、楽しみながらプレーしていたところに、東京の強みを感じました。残り1分半で97-77となった時点で勝利を確信したのか、すでに選手は抱擁を交わしていました。ニックやヘリコプターがブースターを煽り、会場の雰囲気は最高潮に。控えの選手も全員出場し、東京ブースターにとっては最高のゲームとなったことでしょう。
このように東京が素晴らしいパフォーマンスを見せた反面、新潟の戦いぶりはちょっと情けなかったです。攻撃の生命線となるインサイドアウトが徹底できず、ディフェンスも結局最後までうまく機能しませんでした。リーグ発足時からbjを先導する存在として活動を続ける新潟ですが、レギュラーシーズンの戦いぶりとはうって変わって、トーナメントでは流れを逃すと一気に失速する弱さを露呈しています。「一発勝負に弱い」(廣瀬ヘッドコーチ)という自覚もあることですし、そろそろ真価が問われる時期に差しかかっています。
ウェスタンは福岡が高松に下克上を果たし、プレイオフ進出決定。これでようやく5月3日のカードが決定しましたね。
14:30 大阪エヴェッサ-ライジング福岡
18:00 仙台89ers-東京アパッチ
今年はどんなドラマが待っているのか、楽しみにしましょう。
会場の演出もかなり期待できそうですよ♪
